もうラッキーパンチは当たらない 日本で学生が挑戦するなら【ラクスル株式会社CEO松本 恭攝氏インタビュー】

今回は12/3(日)に開催される学生起業の祭典「KBC Summit 2017」にご登壇頂きます、ラクスル株式会社の創業者であり代表取締役CEOの松本 恭攝さんにインタビューさせて頂きました!学生時代のお話から創業期の裏話、日本と世界の経済のマクロな話まで凝縮されたお話を伺えました。 

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[聞き手:斎藤、話し手:松本(敬称略)]

 

斎藤:

KBCは世界を変えようと思っている学生が起業という手段と取る時の一助となればいいなと思いオウンドメディアを始めました。読者には学生、中でも慶應の学生は多いと思います。まずは松本さんの学生時代のお話を伺わせて頂きたいと思います。宜しくお願い致します。

 

「ゼロ」から「イチ」を作ることに目覚めた学生時代。団体の立ち上げ、本の出版からバックパックまで

 

斎藤:

最近は起業がしたいという大学生も見かけるのですが、松本さんは大学入学当初から起業することを意識されていたのでしょうか?

 

松本:

全くしていなかったですね。

 

斎藤:

そうしたら松本さんは学生時代はどういったことをされていたのですか?

 

松本:

大学生の時はOvalというビジネスコンテストを主催する学生団体の立ち上げメンバーで、団体がなにもないところから組織を作って運営していました。コネクションも何もない状態で、中国と韓国でも組織を立ち上げようってなって、最初は誰からも「絶対にできないだろう」と言われていたんです。でもネットワーク作りから始め、組織を立ち上げて結果的にはそれぞれの国に1年で100人を越す人たちが運営に関わり始めました。みんなができないって言っていたのがたった1年で実現したんです。そこから「ゼロ」から「イチ」を作るということに目覚めて。その後は例えば、当時流行っていた「学生投資倶楽部」というのも立ち上げて、東京大学でイベントを開いたり、マネックス証券さんと一緒に本を出版したりだとか、色々な「ゼロイチの立ち上げ」をやりましたね。

 

斎藤:

学生時代に本の出版までされていたのですか?!

 

松本:

はい、そうですね。それからバックパッカーもしたことがあって、就職が決まった後、半年カナダのバンクーバーに留学、次の半年で南米、中国、インド、ヨーロッパなどを回って「見たことのない景色をみよう」として色々と動き回っていました。誰かの作ったものではなくて、自分の頭で考えた誰もやったことのないことを中心に学生時代の時間を使っていました。

後はシリコンバレーにも行ったんですけど、現地の有名な日本人のリストを作って会いに行ったり…

 

斎藤:

どうやって彼らに連絡を取ったのですか??

 

松本:

メールアドレスとかわからないので、名前と会社名から推測して組み合わせでメールアドレスを何パターンか作り、メールを出しましたね。その時だいたい20人くらいの方にメールを出したんですけど、ほぼ全員があってくれました。これも誰かの敷いた道を通るのではなく自分で切り開いて、誰かが用意したものではなくて自分で取りに行って見に行ったものです。

 

斎藤:

ところで今回12/3(日)のKBC Summitのご登壇を二つ返事で引き受けて頂いたところには、どういった思いや期待があるのか伺いたいなと思います。

Ovalでビジネスコンテストを運営されていたというお話がありましたが、実は私たちKBCでは数年前からビジネスコンテストをやめて学生向けのアクセラレータープログラムの運営に切り替えたんです。書類選考を通った18チームが3ヶ月の間で6チームまで絞られてKBC Summit当日が最後のDemo Dayになっていて…

 

松本:

お、じゃあ当日は実際にそれぞれのプロダクトとかも出てくるんですか?

 

斎藤:

はい!実際にもうアプリを出しているチームとかもあります。

 

松本:

そうやってやったことのないことにチャレンジして経験していくことは素晴らしいことなので頑張って欲しいですし、当日が楽しみですね。

 

1年で1000万円の協賛金を集めた学生時代。人の限界は「能力」ではなくて「想像力」

 

斎藤:

ありがとうございます!ところでOvalの運営経験から得られたものはなんですか?

 

松本:
Ovalって今では長く続いていますが、当時は本当になにもなくて…

 

斎藤:

いわゆる「ゼロ年目」ですね。

 

松本:

ゼロ年目…寧ろマイナス1年目ですかね(笑)頭の中で構想だけがあって、誰も見たことないし、やたらと多くの人を巻き込むし、やたらとお金もかかるし…1年目って1000万円かかったんですよ。突然1年間で1000万円集めて下さいって、まぁ無茶じゃないですか。でも僕らはやったんですよね。

そうやって初めてやる時にだいたい直面する大きな壁って「無理だからやめたほうがいいよ」って言われることで。ほとんどの人ができない理由を探してしまうし、周りもできない理由を教えてくれる。何かを始める時は抵抗勢力、もっと言うと「心配してくれる人」がいるんですよ。東大の偉い教授とか有名なコンサル会社の社長さんだとか偉い人たちができない理由をたくさん教えてくれましたね。でも僕らの頭の中ではできる絵が明確に見えているんですよ。結局、人の限界って「能力」ではなくて「想像力」なんですよね。その気づきがOvalを経て、人生で得た一番大きな収穫です。

 

斎藤:

ラクスルの事業を始める時も人に反対されることがあったのですか?

 

松本:

ありますよ。まずベンチャーキャピタルに投資をほぼ全部断られていますね。起業家だけには見えていて他の多くの人には見えていないんですよ。投資家はその事業に人生をかけている訳ではないので、投資家にできないって言われたからできないっていうことは絶対になくて、自分の中で明確なイメージがあれば大体の事はできます。

 

インターネット事業は日本経済の1.5% 問題の根深さは残りの590兆の中にある

 

斎藤:

なるほど。この記事は起業したいと思っている学生とかに読んで欲しいと思っているのですが、彼らってどのマーケットで事業を始めるか、業界選びにも悩むと思うんです。やっぱりITのサービスがキラキラしててアプリとかメディアを始める人が多いですが、松本さんは出版業界というところに目をつけられて、そこにはどういったマインドセットや決断の方法があったのでしょうか?

 

松本:

まず、明確に言えるのがラクスルはIT業界であり、インターネットテクノロジーを中心とした”テクノロジー”の会社です。社員の半分以上がエンジニア等プロダクトをつくるメンバーです。ただインターネットの世界だけに閉じているのではなく、よりリアルな社会と繋がっていくインターネットの事業をしている。なぜこれを選んだかっていうと問題が圧倒的にこっちの方が大きいからです。マクロな話でいうといわゆるピュアインターネットの日本の大きな会社、GMOさんやYahoo!さん、サイバーエージェントさんだったりの時価総額全部合わせても10兆円程度 です。一方で日本の上場企業の時価総額って全部で600兆以上あります。つまり日本のピュアなインターネットって日本の経済の中で1.5%くらいしか占めていなくてどう考えても端っこなんですよね。だから問題の根深さって残りの590兆の中にあって、リアルな産業にアクセスしてそこにある問題をインターネットで 解決していくっていうことをやっていかないとインパクトがでないんです。なので僕はそうやってインターネットを使って古い業界に革新を起こしていく事をやりたいなと思っています。

 

斎藤:

そしてなぜ印刷だったのでしょうか?

 

松本:

前職がコンサルティング会社だったのですが、色んな会社のコスト削減をしていて気付いたのが印刷が最も削減率の高いBtoBの項目だったんです。無駄が多いからこそ、そこで問題解決をしていこうと思いました。

 

斎藤:

そうだったのですね。あ、松本さんが前職から独立された時の有名なエピエードあるじゃないですか。独立してすぐ、今では投資家として活躍されている佐俣アンリさんに嬉しそうに「会社やめたよ!」と電話したというお話を他の記事で読んだことあります。あの時はどういう思いでなぜアンリさんに電話をしたのですか?裏話があったら是非伺いたいです。

 

松本:

アンリって当時からインターネット業界の人と繋がっていたから電話してみようと思ってかけたんです。私が就職活動をしていた時代 は今と違って、ネット業界は脚光を浴びていなかったんです。DeNAも グリーもほとんど就職先として認識されていなかった時代です。寧ろネット業界は胡散臭いと思われていて、その業界にいく人なんてほぼいなかったんです。そんな中でそういえばアンリだけはネットっぽい話をしていたなーと思って、ネットといえばアンリというイメージがあってまっさきに彼にかけました。だから当時は別にすごい仲が良かったという訳ではなくて(笑)

 

斎藤:

そうだったんですか!確か、お二人はインターンが一緒だったんですよね。じゃあ、インターネットを使った事業を考えていて彼から何か聞けるんじゃないかと思って電話をかけたという訳ですね。

 

松本:

はい、その時からインターネット×印刷業で何かやろうと考えていました。

日本はインターネット後進国 中国の3-5年後ろにいる

 

斎藤:

松本さんは学生時代にシリコンバレーに行ったことがあるとおっしゃっていましたが、KBC Summitでは優勝したチームが賞金でシリコンバレー研修(昨年は約2週間)にいきます。学生のうちにシリコンバレーにいくとなったらどのようなことが得られるのか、こういう風に過ごしたらよいなどアドバイスがありましたら教えて下さい!

 

松本:

現地の日本人に会って話すのではなくて現地の人と通訳なしで話すのがいいです。先日、中国の北京に行ってきたのですが、日本のインターネットって中国に比べると3-5年遅れ いる印象 ですよ。規模も全く違うし、全くの別世界で、シリコンバレーと比べても中国の方が進んでいるかとおもいます…

 

斎藤:

シリコンバレーより中国の方が進んでるのですか??

 

松本:

はい、肌感で中国の方がスピードが早いなと思います。僕が学生だったらまず日本で就職はしないですね。

 

斎藤:

実は先ほどエンジェル投資家の有安伸宏さんにインタビューして来たのですが、全く同じことをおっしゃっていました。日本はどんどん高齢化が進んで終わる国だからって。

 

松本:

日本って人の数が少なすぎるんですよね。そしてインターネット化が遅すぎるからスタートアップをする夢が欧米や中印に比べ小さい です 。 アメリカにも中国にもインドにもユニコーン(10億ドル以上の時価総額のある未上場企業)が何十社とあって、数社はデカコーン(100億ドル以上の企業価値のある未上場企業)が数社あるんです。で、それが3-5年で出来上がっちゃうんですよ。インターネットの事業の規模だったり、スピード感だったり、テクノロジーのレベルだったり、人のクオリティだったり、グローバルで比較すると日本は残念ながら完全に後進国なんですよね。これから挑戦するチャンスがあるのだったら日本で戦うという考え方ではなく外に出た方がいいです。

 

斎藤:

そしたら優勝チームがシリコンバレーに行くとなったら現地のスピード感だったりを見て日本がいかに遅れているかを感じてきた方がいいということでしょうか。

 

松本:

そうですね。そういう肌感は絶対持っておいた方がいいので、現地にいる日本人に話を聞くんじゃなくて現地の人とダイレクトに話して、向こうの学生と話をして相対感覚を持った方がいいです。ラクスルでもこれからグローバルな採用をしていきます。日本で働きながらも世界で戦う。今年の新卒では既に中国人、 インド人を採用しました。

 

斎藤:

新卒でですか!

 

松本:

はい、やはり人のクオリティが非常に高いんです。日本はこれからどんどん小さな国になっていくので日本の外で何が起きているのか、日本のメディアを通じててはなく、ダイレクトに情報をとって、人の話を聞いて、ダイナミズムを感じて欲しいなと思います。その上で日本でどう戦うかを考えるのなら良いと思うのですが、いきなり日本ですごくライトなサービスをローンチして、自分の知っている世界の中だけで小さく終わってしまう の

もったいないです。 せっかくこれから可能性があるのだったら、アメリカへ、中国へ、インドへ、アフリカへ、東南アジアへ行ってそのリアルを見て欲しいなと思います。

 

斎藤:

そうしましたら、起業したい、面白いことをしたいと思っている学生へメッセージをお願いします。

 

松本:

日本を飛び出して日本の外の世界で何が起きているのかを見て、その上で日本で戦うのか、日本の外で戦うのかを決めて欲しいです。私が学生だったら日本でやらないですね。

 

斎藤:

状況が変わってきていますからね…

 

松本:

そうです。いま日本は明確にインターネットにおいては後進国で、テクノロジーもAIひとつとっても遥かに遅れています。ゼロから日本で頑張って世界にキャッチアップしようと思ってもたぶん無理なので、グローバルのテクノロジー、エンジニアリング 、マネジメント スタイルを学んでやるべきです。世界のユニコーンのCEO、Founderのほとんどが ハーバード、スタンフォード、UC、IIT  です。(参照記事「Here are the colleges that have produced the most founders of billion-dollar startups) 今の時代スタートアップを始め、スケールをするためには高いインテリジェンスがもとめられます。 ラッキーパンチは当たらないんです。だから世界の最高環境で勉強と経験をして 上で起業することをお勧めします。勢いで起業して当たる確率はどんどん減ってきています 勉強はもちろん大学の中でも外でもできます。海外であれば大学でも とてもプラグマティックなことも教えてくれるので海外で学ぶのもよし。とにかく自分たちに見える水準感ではなくグローバルに目線を変えていって頂きたいなというのがメッセージです。

 

斎藤:

ありがとうございます。最後にKBC Summitに向けての期待などありましたらひと言お願いします!

 

松本:

ビジネスプランは重視しません。肌触りのあるプロダクトで、誰の何を解決するのか、そこの解像度の高さが重要です。本当にこれを通じてユーザーはエンターテイメントを楽しめるのか、問題を解決できるのか、そこの声やリアリティーをどこまで作れているのかを期待しています。ビジネスのスケーラビリティの観点もありますが、でもそれよりもプロダクトを徹底的に磨き上げて来て欲しいなと思います。

 

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大変お忙しい中、今回のインタビュー、ご登壇を快く引き受けて下さり、本当にありがとうございます!KBC Summitで松本さんはフリークアウト・ホールディングスの佐藤 裕介さん、エンジェル投資家の有安伸宏さんと共に「100年時代の人生戦略 -混沌から生まれる秩序」をテーマにしたセッションにご登壇されます。モデレーターはSFCの教授の琴坂 将広さんです。当日どんな化学反応が生まれるのか楽しみです! 

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(文責:斎藤夏美 @nachara_xxx